菜の花のこと/はるな
 
務員も、あれを見るだろうか。彼女にはぜんぜん似つかわしくない、屈託のない黄色。風がつよく吹いていて、コンビニエンスストアのまえを、空き缶がからから転がってゆく。学生が大勢バスから降りてきて、ロータリーを染める。ここには桜も菜の花もさいていない。名前のわからない細い気が、新芽をだしている。その緑いろがとてもやわらかで、我をうしないそうになる。
それがそこにあって、わたしはここにいる。いつも、これがそれかもしれない、と思うのだけど、たいてい、これはそれではない。人々は、それをすでに手にしているか、あるいは、それがなくても全然かまわないというふうに見える。わたしはでもそうではなくて、それを自分のものに
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