ボクらのバラエティーブック/乾 加津也
ャッター全開 早出しスタート
むっとくる防寒服の匂いにも慣れれば
指先よろしく蔵出しの爪を引きながらフォークを自在に転回させる
うぬぼれ青二才たちのコンサートが始まる
そのせつなにも
視界の右端
じわりじわりと
海のほうからにじり寄る
おとを
汐で洗われた朝もやの
紫の変化(へんげ)だけは
よもや
捉え損ねることはない
抱きしめたい疲労感で
きょうも
多摩川沿いを自転車で疾走する
いまにも千切れては膠着する
あられもなく痛々しい
この星の
この国の
この砂の
歴史ひとつは
饒舌な川面に逆らうように
じぶんの城砦
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