千秋楽/かいぶつ
じいさんはケイちゃんが今、私にしているように
私が最後に掴んだ桜の木の枝をやさしく抱き寄せながら
最愛の人の成仏を祈るように
ただ静かに泣いていた。
私はケイちゃんの腕を借りながら
じいさんのもとへ近寄った。
そして何度も「ごめんね。じいさん、ごめんね。」
と何度も、何度も何度も
まるで壊れた自動ドアが「いらっしゃいませ。」
を何度も繰り返すように
何度も、何度も謝っていた。
今夜中にじいさんに許してもらわないことには
もう二度と、この校庭には戻れないような気がして
私はじいさんが泣き止むのをケイちゃんいっしょに
しばらくの間、見守っていた。
すると、ふいに
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