ドーラン/番田 
 

自分が忘れかけていたものを取り戻すようにして、生きて欲しいけれど、心はすでに瓦礫の下だ。私は一目散に家路を帰りたかった。放射能の拡散を目に留めるようにして、バラバラにさせられた家路を、死なずに帰りたいものだった。しかし何もする気も私は起きなかった。そこで押しつぶされないようにしたまま、無事にホームに降り立つことなどできるものだろうか。私は人の流れに押しつぶされそうになりながらも、辛うじて、スペースを見つけた場所に飛び込んでいった。そうして線路を揺れながら進んでいく電車の音と、南北線の緑色をした壁の前を歩いていった。何一つ迷うことなど無いと自分自身に言い聞かせては、私は歩いた。目に染み入るほどに
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