視界を選ぶ/殿岡秀秋
 
朝のぼくの踊りを
おもしろがって
叔父は手を叩いてはやす

なんとか玄関までたどりつき
靴をはくときに眼をあける
そのまま玄関から出ていくと
その朝は気分がいい

嫌いなものは叔父だけではない
重い義務を両肩にしょって
通う小学校も
目にいれたくない

楽しいことは空想の中にしかなかった
その姿を見られたくないので
人がいない庭の
無花果の樹の前に立つ

空想にはいるとき
幹の肌の焦点がぼける
網がかかったスクリーンに
自分が演出する舞台を生みだす

不安から逃れるクスリのように
しばらくの間
自分で作った
ストーリーに酔う

いつまでもそ
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