小さな君への挨拶/岡部淳太郎
 
からない
ただひとつ
君や僕のように小さな
ひとつぶずつの人にわかるのは
僕等は何も
間違っていないということだけだ

何ひとつ
間違ってはいない
それで
こんなことになってしまった

春はなかなか訪れず
僕等は少しぐらい揺れただけでは
驚かなくなってしまった
それほどに僕等は
ここに慣れてしまった

けれども小さなものたちは
人のように小さな
いのちを動かすものたちは
いまもこうして
何かを窺っている
行方不明や死者の
それらの数字が無感情に読み上げられ
いまここにいるということに
気づいた僕たちは
それぞれに小さな
何かに気づき始める

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