小さな君への挨拶/岡部淳太郎
 


小さな君よ
小さな僕と
同じように小さな
この領土に散らばるむすうの君よ
自らが生きていることに
気づいているか
君の小さなこころが
まだ寒い風にふるえて
頭の中を揺らしている
何度も
何度も
揺らしている
君のもとに
寄せては返す
大きすぎる苦難の波が
君の姿をそのたびに
洗い出すだろう

そして僕等は
自らのいのちの残量に気づいて
互いに挨拶を交わす
まるでそれが
小さなものであることの
確認であり
そうすることで少しだけ
大きなものになれる
呪文でもあるかのように

それから夜がやってくる
この世でもっとも暗い
けれどもそれゆえに
小さなものたちのいのちを
浮かび上がらせる
長い夜がやってくる



(二〇一一年三月)
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