マリー/ホロウ・シカエルボク
 
変わっていた
俺は着替えて散歩に出た
堤防沿いを歩いていると
そのうち川はふたつに分かれた
小さな支流の方を選んで
半時間ばかり歩くと
景色が田舎めいて
閉じられた水門に辿りついた
そのあたりには
水はほとんどなかった
ひと休みしようと腰を下ろそうとして
背の高い雑草の中に
見覚えのあるコートが目にとまった



水門に辿りつこうとして
力尽きたみたいに
彼女はうつ伏せていて
はじめは
眠っているのだと思ったが
どうもそうではなかった
微かに見える指の先や
頬は
マネキンのように白くて
確かめるまでもなかった



あまい
蝋燭みたいな匂
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