マリー/ホロウ・シカエルボク
も否定はされなかったもの
みんな困ったように笑うばかりで…
そう言って舐めるように飲んでは
くちびるの右端で笑った
前時代的なラブ・ホテルの照明みたいな
「法廷」の明かりの中で見るそんな笑いは
純粋過ぎて難儀している魔女のように
俺には
見えたんだ
彼女がどこから来て
どこへ帰って行くのか
誰にも
判らなかった
というより
彼女について判っていることはなにもなかった
ただ
長いこと
「法廷」で飲んでいる
誰に聞いてもそれ以上のことは判らなかった
そして誰もそれ以上知りたいとは思わなかった
彼女は
そんな女だった
あれはいつ頃だった
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