マリー/ホロウ・シカエルボク
ったろう
そんなふうにして数年が
過ぎたころだったように思う
小雨が降ったり止んだりする
寒くて
暗い夜だった
彼女はいつもより疲れていて
いつもより悪い笑い方をした
自嘲的になったかと思えば
なにもかもを保ったまま気絶するみたいに
突然止まってしまったりした
そしていつもより早く飲んだ
それまでのどの日とも違っていた
レコードが何に変わっても気にもとめなかった
そして糸が切れるみたいにカウンターに突っ伏した
気持ちが悪いから外へ連れて行って
俺は彼女を背負って
「法廷」の外へ連れ出した
潰れたカフェの裏手の
行き止まりになっている路地の陰で
彼女の中に巣食
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