マリー/ホロウ・シカエルボク
 

翌日の新聞の
五行の記事になった
でも
そこに書かれていることは
「法廷」で飲んでる連中には
みんな
判ってることだった
「身元不明の女」
すこし違うのは
その下に
「死体」と
つくことくらいで



俺は時々
海に出向き
古いシャンソンや
パティ・スミスの
レコードを
何枚も
フリスビーのように投げる
いつか
「もういらない」と
彼女が
言わないかと思って
衝動的にそうしてしまう
あの時と同じ雨はなく
あの時と同じ明方はなく
ただ悲鳴のような泣声と
子供のような微笑みが
脳裏を
よぎるばかりで



膿んだ傷のある腕を
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