マリー/ホロウ・シカエルボク
膿んだ傷のある腕を
長袖の服で隠して
調子の外れたハミングは
いつでも古いシャンソンをたどって
彼女はマリーと呼ばれていた
マリアンヌみたいなコートを
いつも着ているせいだった
「法廷」という名の
街の外れの
薄汚れたビルの地下にある
バーに行けばだいたい会えた
雨の日以外は
そこに行けば飲んでいた
パティ・スミスの
静かな曲だけをリクエストして
時間をかけて何杯かを飲んでいた
夕暮れ時から
日付が変わるあたりまで
彼女はその店の
影みたいにそこに居た
飲むカネと元気がある
週末は
俺はその店に出向き
彼女と並んで飲んだ
パティ・
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