ユニコーン/三条麗菜
 
う朝靄の中で
炎のように赤く染まった
角を振り立てて
獣は狂ったように走り出しました
雲を突き刺す摩天楼が
建ち並ぶ街へと

街では可能性という名の
複雑に入り組んだ文明の証が
光輝く道路を縦横に
駆け回っていました
あらゆる人々は
空洞になった目をして
その瞳の奥には長針と短針が
正確に時を刻んで踊っていました
その眩しい光景が生み出す
めまいをこらえて
獣はただ走り続けました

自分が少女に分け与えた
角の香りをかすかに
風に感じながら
狂った獣に怯える
人々の叫びを
耳に感じながら

摩天楼に囲まれた一室で
人間ならではの苦悩を
暗い背
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