ユニコーン/三条麗菜
 
い背広の下にはりめぐらせた
一人の男に抱かれて
少女は初めて花が咲くように
心を開きました
あの濡れた真珠色が放つ
甘い香りが偽りであったと
少女は悟ったのでした

その時窓を破り
狂った獣が踊り込んできました
全身の白い毛を眩しく輝かせ
赤い光を放つ角をまっすぐに
少女の心臓に向けると
そのまま一気に突き進みました

君の名をつぶやくと
あの獣が今でも草原に立ち
激しい風に波打つ
白い毛が見えるようです
そしてもはや
真珠色ではなくなった
一本の角も

少女は生きていました

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