【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
かつてはあったような気が、しているのです。
定まらない主語。定まらない語尾。これは語り手自体が揺れながらなのではないでしょうか。共にあるわたしは読みながら揺れずにはいられません。「市道といいましたが民家に横附けされていたので、ドアは擦れないようにそっと開かれました。」ふとすればなんでもないこの一文にも、「市道といいましたが民家に横附けされていたので、」というのは、なんだかヘンテコで、どのあたりがいいましたがなのか、そしてそのあとには「ドアは」と当然のようなドアはが続き、頭の悪いわたしは、ああ「先程は車は市道に止まっているといったけれど実は車は民家に横附けされていたので、ドアを開くときは擦れないよ
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