【批評祭参加作品】遊びごころという本気 ー辻征夫試論ー/石川敬大
が『かぜのひきかた』以後、死去する直前のもう詩は書かないと他人に語るまでの間あれほどの多作に転じるのは、辻の内面から詩作品までの行程にバイパスができ、それが完成を見たからに違いない。その完成したバイパスによって後に『俳諧辻詩集』の「遊びごころ」の「本気」さが生まれたのではなかったか。
辻は、晩年こそたくさんの賞を受賞したが、時代の思潮に反する表現の平明さゆえか、一九六二年に刊行した第一詩集『学校の思い出』以来ずっと不遇なほどに賞とは無縁であった。二十五年後の一九八七年の「藤村記念歴程賞」が最初である。メルクマールとなり転換点ともなった詩集こそがこの『かぜのひきかた』である。佳品が揃っている、次に
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