【批評祭参加作品】遊びごころという本気 ー辻征夫試論ー/石川敬大
 
次に引用してみよう。

 ランドセルしょった
 六歳のぼく
 学校へ行くとき
 いつもまつおかさんちの前で
 泣きたくなった
 (中略)
 ランドセルしょった
 六歳の弟
 ぶかぶかの帽子かぶって
 学校へ行くのを
 窓から見ていた
 ぼくは中学生だった
 弟は
 うつむいてのろのろ
 歩いていたが
 いきなり 大声で
 泣きだした
 まつおかさんちの前だった
               『まつおかさんの家』より

 こころぼそい ときは
 こころが とおく
 うすくたなびいていて
 びふうにも
 みだれて
 きえて
 しまいそうになってい
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