【批評祭参加作品】遊びごころという本気 ー辻征夫試論ー/石川敬大
 
ている
 (中略)
 それはかぜではないのだが
 とにかくかぜではないのだが
 こころぼそい ときの
 こころぼそい ひとは
 ひとにあらがう
 げんきもなく
 かぜです
 と
 つぶやいてしまう
 (中略)
 こころぼそい
 ひとのにくたいは
 すでにたかいねつをはっしている
 りっぱに きちんと
 かぜをひいたのである
               『かぜのひきかた』より

 これを読んでいると、わたしはなぜか「かぜのひきかた」を詩の書き方と読んでしまう。かぜをひくのと詩を病む(取り憑かれる)状態とはどこか似ていないだろうか。詩作する時というのは、ある種肉
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