【批評祭参加作品】遊びごころという本気 ー辻征夫試論ー/石川敬大
』のおわり三行の「雨がやんだら?/ばかやろう/さっと出て行くのさ」や、『蛍』の「だれだいこんなの作ったのは(中略)ま いいや/鰹節で一献さしあげたいと/そいって呼んでおいで」などの箇所は、江戸落語の語り調で、連綿とつづいてきた俳句の伝統がこの語りを呼び寄せたのか、辻の資質が呼び寄せたのか、そういったものが詩集全体を支配している。先に指摘したように、軽妙なとぼけた味と対象との距離のとり方の絶妙さが辻の特徴なのだが、エッセイではそれとは対照的な文章を書いている。まず『あとがきのページで』の『遊びごころと本気』では、仲間と始めた句会のことを「遊びごとを始めるにあたって(中略)、本気でやろう(中略)遊び半
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