【批評祭参加作品】遊びごころという本気 ー辻征夫試論ー/石川敬大
 

 酒屋の土間
 どこからでもいいが
 黙って見ているのがいちばんいい
 するとなにやらてめえのなかにも
 降りしきるものがあるのがわかってくる
 なんだろうこの冷たさは
 なんて
 ……
 雨がやんだら?
 ばかやろう
 さっと出て行くのさ)    『五月雨』全行

 噛めば苦そうな不味そうな蛍かな
 (だれだいこんなの作ったのは
 土手の野良猫です?

 ま いいや
 鰹節で一献さしあげたいと
 そいって呼んでおいで)   『蛍』全行

 なんだか冒頭の句の解説のような、あるいは句によって得られた情景や設定を展開させたような詩になっている。『五月雨』の
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