【批評祭参加作品】石原吉郎の可能性 ー石原吉郎試論ー/石川敬大
 
へ伏せ
 て答えた。重ねて北条と。かどごとに笠を伏せ
 南北に大路をくぐりぬけた。都と姓名の その
 いわれを問われるままに。
               (詩集『北条』より「北条」全行)

  足利の里をよぎり いちまいの傘が空をわた
 った 渡るべくもなく空の紺青を渡り 会釈の
 ような影をまるく地へおとした ひとびとはか
 たみに足をとどめ 大路の土がそのひとところ
 だけ まるく濡れて行くさまを ひっそりとな
 がめつづけた        (詩集『足利』より「足利」全行)

 安藤元雄は、『現代詩を読む』(小沢書店)で、「死の直前の時期に石原が書きつけていた作品
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