【批評祭参加作品】石原吉郎の可能性 ー石原吉郎試論ー/石川敬大
 
であるのか、それとも不自然さを装った自覚の上に築かれたものなのか、と。それほどに、先に引用した詩句の改行箇所はヘンだ。次のような詩がある。

 なんという駅を出発して来たのか
 もう誰もおぼえていない
 ただ いつも右側は真昼で
 左側は真夜中のふしぎな国を
 汽車ははしりつづけている
      (詩集『サンチョ・パンサの帰郷』より「葬式列車」一部)

 われらのうちを
 二頭の馬がはしるとき
 二頭の間隙を
 一頭の馬がはしる
 (略)
 われらのうちを
 二人の盗賊がはしるとき
 二人の間隙を
 一人の盗賊がはしる
 われらのうちを
 ふたつの空洞がはし
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