【批評祭参加作品】石原吉郎の可能性 ー石原吉郎試論ー/石川敬大
 
れるか
 潮にひきのこされる
 ようにひとり休息へ
 のこされるのがおそろしくないか
 約束を信じながら 信じた
 約束のとおりになることが
 いたましくないか

「ことばの動きと心の動きとのあいだにかすかなずれのようなものがあ」り、その「ずれを形作っていた」「ふたつの動きが」「ぎりぎりとからみあってゆくさまを、ほとんど一行ごとに見てとることが出来る」「心の動きとことばの動きとが、詩を形作る要素としてともに生かされ」「ずれそのものが、或る積極的な持続を獲得している」と。
 つまり、体験と詩句との間にある緊張関係にこそ詩の核心はあるのだと。あるいは、こんなふうには言えないだろうか。
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