【批評祭参加作品】石原吉郎の可能性 ー石原吉郎試論ー/石川敬大
 
に還元するのは不可能なことで、体験をすべて読み解かなければその詩作品を読み解いたことにはならないなどということもできやしないだろう。ただ、彼の場合どうしても体験と密着して読まれてしまうことが多い事実は否定しようがない。評論家の粟津則夫は、現代詩読本『石原吉郎』のなかで詩篇『夜の招待』や次に引用する『夜がやって来る』を解説しながら核心を衝いた面白いことを書いている。

 駝鳥のような足が
 あるいて行く夕暮れがさびしくないか
 のっそりとあがりこんで来る夜が
 いやらしくないか
 たしかめもせずにその時刻に
 なることに耐えられるか
 階段のようにおりて
 行くだけの夜に耐えられる
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