【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
 
在が危篤の態であることに何ら変わりないからだ。
 このごろ『現代文学理論』(新曜社)という著作を読んでいるのだが、そこで丸山圭三郎はソシュールの記号論を大胆に敷衍した「言葉が世界を文節し、事物を生じさせる」というテーゼを唱え、ヤーコブソンは文学の文学性を探求すべきであると主張している(構造主義)が、どこかサンボリズムにも似て、わたしには富永の詩を理論づけているディスクールであるかと読めてしまった。そのことはまた、富永の詩が「象徴詩の帰結点を示し、存在の危機感を表明した」(『詩の現在』)ものであり、サンボリズム(有明・泣菫・露風)やシュールリアリズム(北園克衛・瀧口修造)も含めて総称するところのモ
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