かぐや指/salco
れてしまいましたが、無
事な左眼も、ここ何日も激痛が及んで涙で霞み、目やにで塞がり、よく
見えません。今は光さえも怖い気がして、お婆さんは擦り切れた掛け布
団を瞼まで引き上げようとしました。
「返事は?」
指は枕からこめかみへ飛び移ると生え際にこじ入り、髪束を腹に巻き
つけてぎりぎり引っぱりました。
「ああ」
「それから一つ」
「痛い、やめとくれ」
「私を育てるんだよ。大きくするんだ、一人前になるまで」
「やなこった。あっ!」
と言うのは、指が左瞼の上に滑り降りて来たのでした。
「何だって?」
「ええ、はいよ。わかったよ」
「ただ育てるだけじゃない。私は贅沢三昧に
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