かぐや指/salco
、お爺さんに
も何とか工面できる袖の下で売り子に加えてもらえたのでした。
もちろん、お爺さんだってこんなつらい仕事はしたくありません。ひ
んやり暗い石室に座り慣れた老体でまばゆい灼熱に立ちずくめでは、半
時が一日にも感じられ、一日が終わる頃には五年も老いたかのようにふ
らつくのです。けれども指を養う乳製品が今や一日も欠かせず、高級基
礎化粧品を買うにはこつこつ貯金せねばならず、他に帰る先とて無い身
であれば、やはりお婆さんの二の舞は御免こうむりたいのでした。
頭蓋までも刺し貫かれたかのように、空っぽの眼窩がずきずき痛みま
す。右半分の視界はひと足先に永遠の闇へ葬られて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)