かぐや指/salco
 
らかと言えばテノールにより近いアルトの絶叫を上げて、仰向
けざまに倒れました。
「このくそ婆あ、いぎたない脳みそを掻き出してやる」
 指は眼球を突き抜けて眼底に達し、視神経をかきむしりつつ眼窩をえぐ
ります。ごりごり。ごりごり。
「やめてぇ! やめてえ、お願ひいぃぃ」


 こちらは胆汁ぐらいしか胃の腑からひり出せないお爺さんが戻って来て
みると、つい先刻まで意気軒昂だった女房が床をのた打ち回っています。
「何をおめえ、柄にもなく生娘みてえな声出しやがって」
 と、よくよく目を凝らしてみれば、押さえた片目から真紅の涙さえ流し
ているではありませんか。
「おんやまあ……」
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