かぐや指/salco
 

「痛い痛い! やめてえぇぇ」
 息も絶え絶えなその様子に、ついお爺さんが記憶野の地平線に新婚初
夜を彷彿していると、伏せた顔からまばゆい光がぽろりとこぼれ、とう
とうお婆さんはイってしまいました。

「……婆あ、くたばりやがったか」
 恐る恐る近づいてみると、そこに転がって俄然存在を放っているのは
無論しおらしい新婦のなれの果てではなく、指とダイヤを生やした眼球
なのでした。
 こりゃ、婆あの目ん玉か?
 その時です。
「ちょいと! 馬鹿みたいに突っ立ってないで、この腐れまなこから私
を引き抜くんだよ」
 えも言われぬ可憐な声に呼びかけられて、お爺さんが戸口を振り向
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