かぐや指/salco
ますますすごいよ」
と、まるで見た事もない宮殿の大広間で自分自身が踊っているかのよう
に、お婆さんもすっかり夢心地です。洗われた指は透けるように白く、皺
一つない若い女のものと知れ、しみだらけの枯れ枝のような我が手とは別
世界に暮らしていたのが瞭然です。艶やかな楕円の爪にも溝一本ありませ
ん。これがまた全権特使の差し出す降伏状よろしく優越感をくすぐるので
した。
「ケッ、ざまあみろだよ」
今度はじっくりと食卓に腰を据え、満身の力を込めて引っぱります。次
には貴重な菜種油さえ擦り込んで回そうとしましたが、指輪はびくともし
ません。切断面である指の根元からも、細い筈の指先からも
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)