バルコニー/番田 
 

何も見えなくなっていた
見知らぬ遠くの街角で
夜に吹かれていると 何だか 眠くなる


死にたくならないのは きっと 人だけだろう
私は金魚を飼ったことがあるけれど
色とりどりの模様だけが 私の記憶には 残っている
誰も知らない日曜日
映画館の座席にひとり 腰掛けている
適当なのかもしれなかった
そうなのではないとするのなら
私は釣り糸に身を任せていたいのだ



思いを浮かべた
何者かによって 沈む時を そこで 待っていた
きっと そうだった
赤く沈んでいく夕暮れだった
今日も 誰かが歩いていく
影がそこに揺れている
何も知らない子供に魚が釣れるの
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