晩秋、午後四時、/佐々宝砂
晩秋の午後四時
まだ夜ははじまらない
こんな時間に酒を飲んでいるのは
私の朝が今日は午前四時からはじまったからだ
ふつうと数時間ずれているのだと考えてほしい
ああそうだ
確かに
先月の私はふつうとちょうど十二時間ずれていたのだけれど
その仕事はもう終わってしまった
秋ももうすぐ終わってしまう
私すこしは今年の秋を愉しんだかしら
冷蔵庫のなかで生栗が黴びかけている
窓のそと柿もいちじくもすっかり熟して
食べもしないうちに腐って落ちてしまった
うつりにけりないたづらに
私も腐って落ちるだろうか
熟して けれど 食べられないままに
私は働く
働かないと生き
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