薬が効かない/三条麗菜
 
何ともないのです

この電車は静かに進むので
鳥たちとは友達です
窓にとまってつぶらな瞳で
私を見つめる鳥もいるのです
紅色や黄色の鮮やかな鳥たちで
とてもかわいらしい声で鳴きます

窓から流れ込む風で客席は
緑の香りに包まれています
柔らかな風に揺れる
木々のささやくような
声も聞こえてくるようです

なぜ私は森の中では
生きられない?
こんなに美しい森の中で

毎夜体を降り曲げ
髪を乱し狂ったようになる私は
この電車を降りたところで
生活することなどできないのです
私は人間の文明を身にまとっています
しかも美しくまとっています
生活するためでは
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