薬が効かない/三条麗菜
 
深い森の中に鉄路が走り
群青色の電車が
静かに進んでゆきます
鳥のさえずりを
消さないように

私は食堂車にいて
甘い紅茶をすすりながら
ゆっくりと流れてゆく
外の景色を見て
鳥たちの声に
耳を傾けます

それにしても
薬が効かない

この電車を作る
どの材料がアレルゲンなのか
分からないけれど
私は昨日も寝る前に咳込み
それがあまりにひどく
胃の中身がほとんど
出てゆきました

寝台車のシーツは汚れても
そう何度も替えてはくれません
私は薬をもらいましたが
まるで効かないのです
電車を降りるわけにも
いきません
それに昼間は別に
何と
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