故 中川路良和 詩作品より/まどろむ海月
うつり変りの広い空間の果てに
あてもない淋しさを誰が知っているだろうか
幸福をどれほど求めていたか
どれほど愛を得たかったか
苦しみをどんな気持でおくってきたか
人は何を知っているだろう
僕は人にはたえられなかったことを
ただたえられなかったという
それだけであったろうか
夏の夕ぐれ
白い名も知らぬ花は
かすれたようなもつれたような音をたてて
散ってゆく
? 雨の
雨の降ったあとの
静かな空間には
深い人生が
チロチロと流れてゆく
去ってゆくものへの憂えの心が
雑草の水粒に目をやる
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