故 中川路良和 詩作品より/まどろむ海月
 


飲みのこした
水粒のついたグラスをすかして
目の前の 生きている人間を見ると
ボッーとかすんで
泣いているかと自分を思ったりする
グラスについた水粒は重く流れてゆく

きのうは雨が降った
今日も降るといい
今のうち降っておくとよい
そのうちやんでしまうのだから
自分も幼いとき
もっと心の雨を降らすべきだった
今じゃ
もう泣けないものだから

去ってゆくものへの憂いが
くすぶってくらい夜を
みつめさせる
泣けたらどんなにいいだろう
雨よ霧のように流れてふってこい
雨の降ってくるまえは
何が起こるかわからなくて
不安でしかたがないのだ

雨の降っ
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