必要/相田 九龍
 
随分とのんびりした赤ちゃんが生まれた
優しい木漏れ日の中で たったひとりだった
声が誰の耳にも届かないのを知ったら
泣くのをやめて誰にも知られずに眠った


首のない人形は歩いた
喫茶店の前を通り過ぎて 街のはずれまで来た
赤ちゃんの泣き声がした
切なくて胸が震えた


旅人は陽だまりを見つけた
昼食をここで摂ることにした
背負っていた荷物を置き
大きく伸びをして寝転んだら
そのまま寝てしまった


一緒に泣いてしまいたかった
首のない人形は聞こえない声に揺さぶられた
足がガクガクと震えた
首がないせいだった


のんびりとした赤ちゃんは夢を見た
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