月齢/salco
 

冷たい風が吹き抜けたりはしない
そうしてこの灰色の夜具は
もはや苔むした墓石じゃない

おや… 時が止まったようだ
風さえそよとも流れない
芒も寝息を立てぬこの寂しい場所から
さあ、わたくしを起こして頂戴
此人は
良人は、
夜だけわたくしを愛した
それはなおさら酷い仕打ちでした
此人が髪束を握って眠る間
わたくしの魂は幾たび外を彷徨うたでしょう
閉まった窓から舞い出ては燐光に導かれ
貴方の家まで行ったのよ
貴方はちっとも変わらずに
けれど見知らぬ女と深い眠りの中に居た
良人は土の眠りに就いていた
死んでもこうして傍らに眠っている!

潮が満ちたらわたくし
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