月齢/salco
くしを
浜で波に洗われ日に割れた
わたくしを抱き上げて
そうして連れて行って
銀河見たようにまたゝく波間に浮かべた
一艘の小舟
藍色の涼やかな音と共に海が
ほれ、この重い海が満ちたら
お月様の歌声に目を覚まし
狂おしく膨張した海水が
寒がりの陸地を這い上り始めたら
覆い被さり、愛撫を寄せ始めたなら
こうして砂に打ち捨てられて居た
わたくしを抱いて
連れて行って下さいませね
舳先にわたくしを置いたら漕ぎ出して頂戴
悠久が砂を洗う潮の際から何処迄も、何処迄も
時が死に、世界が裏返るその夜は
汀で呟く満潮が過去へ過去へと戻るから
わたくし達は何処へでもいつ迄も
笑い、語らい、見つめ合いながら
一緒に行けるでしょう?
百年も待って居たのですもの
初戀のひと
海原を何処迄も行きましょう
あやかしの白い光に導かれ
少女の頃開いた本に在った南の果ての孤島へと
椰子の木蔭の思慮深い、誰も知らない孤島へ二人
手を携えて参りましょう
永遠に独りの月の下を
孕んで美しい今宵の光の中を
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