道標はなるべく愉快に/ホロウ・シカエルボク
思った、死ぬ…だけれどそんなことにどれほどの悲しみがあるのだろうか?自分の親だって子供だってみんな死んでいった、あの猛毒の霧で呼吸を塞がれたり、自在な炎で身体を焼かれたりして…自分が死ぬ時だけが特別に悲しいことだなんて彼には思えなかった、自分はただ死ぬだけなのだ、この巨大な水溜りの中で…ほどなく彼は力尽きた、彼の身体はあっという間に波に巻かれ、沈み…瞬きと同じほどの時間で、瞬きと同じほどの価値で、彼の命は尽きるかに思えた、が、次の瞬間、小魚が水面を跳ねながら彼の身体を捕えて飲み込んだ、彼は酷い衝撃にしばらくの間目眩を覚えたがやがて意識がはっきりするに従って、自分は何か大きなものの腹の中にいるのだと
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