大洪水/葉leaf
 
 空の画面に、空の抽斗に、逃げていく木の葉と無数のウィルスが、狭い声のようなものを奪いながら救出されていた。部屋から漏れ出るもの、例えば杭や海や石、それらが発酵した熱が反転して、疎ましい内部の切り絵を傷害していった。分割され、照合され、凝縮され、さらに迫害される中で、あらゆる遠さが折り返され、あらゆる速さが縮れていくのを、視界がこぼさず署名していった。関節と筋肉の織りなす戦模様、血液と細胞の書き上げる住所録、皮膚と蒸気の切り捨てる部屋の装置、いったいどれが国を名乗るだけの絶望を指示しているのか。
 空と雲とが際限なく平均され、電線の機知が街をなだらかにしていく中、すべての他人は緩やかに融合して一
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