大洪水/葉leaf
 
 雨が、雨の首長が、雨の葬列が、雲々とマンション群の順位を定めながら、一枚の焦げたパンの坂を軸にして、三枚の濡れたシャツの日付へと回転していき、神経の限りない深度を測定していた。それは傾き、音から音へと無音を運び、屈折した人類との距離、送還され続けるペンとペンケース、墓のような道路の終結、それらによって漂白された身体の理屈を過ぎ去っていった。成績発表で必修単位が不合格、眼鏡のフレームが切開するパソコンルームの机に肘をついて、今日が昨日を倒し、昨日が一昨日を倒してそれが無限に連なっていくのを見つめていた。三号棟から出て、傘をさし、人間の沙漠と五度すれ違いながら、足音を自転車へ運んで帰宅する。
 空
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