友/nonya
 

豊かな風味を醸し出している

主役の軍鶏ではなく
瑞々しい長葱ではなく
いぶし銀の焼豆腐ではなく
自分とよく似た白滝の
味のしみ過ぎた細い神経を
スルリとすすり込む
うっかり七味唐辛子にむせて
頼りなく泳いだ視線を
向う岸のように受け止めてくれる
香しい微笑みがある

最後の水菓子を弄びながら
交わされた次の約束は
途方もない未来の話の
ような気もするし
昨日の石を明日の端に
繰り返し積み上げているうちに
あっという間に果たされる
ような気もする

ほろ酔い加減で店を出て
それぞれの帰途につく
軍鶏と醤
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