友/nonya
浜町で地下鉄を降りたら
明治座を背にして
とっぷりと暮れた
甘酒横丁をまっつぐ歩く
人通りも疎らな通りを
吹き抜けていく北風が
飼い馴らしたはずのひとりぼっちを
カラコロと泣かせるから
不慣れな道筋を足早に辿って
軍鶏鍋を食いにいく
心細い人の縁を手繰って
鍋を囲む温かい輪に
こっそり加わりにいく
店の二階に上がると
ほどなく乾杯のグラスを鳴らして
鍋と箸の間で
ゆるい世間話が始まる
おちょことおしぼりの間で
ぬるい昔話が始まる
みんなとっても大人
いろんな形の大人が
鍋の中でグツグツ言いながら
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