お代り/小川 葉
距離を
縮めようと必死だ
巨人が優勝した夜
わたしはひとりだった
祖母が甘すぎる玉子焼きを焼いてくれた朝も
わたしはひとりだった
母が病院に連れていってくれた午前中も
わたしはひとりだった
祖父が家業を継げとお金を渡して
少しボケ気味にわたしを説得した夕暮れも
わたしはひとりだった
妹夫婦からお歳暮が届いた年の暮れも
わたしはひとりだった
そしてある日気がつくと
わたしにはわたしの
もうひとつの家族があるのだった
お代りを妻にした
いつも多すぎるからと
わかってるから
適切なお代りを妻はしてくれる
息子にはふりかけをかけすぎないように叱るから
嫌わ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)