お代り/小川 葉
食べている
それでは駄目だと
兄らしく教育していると
裏口で泣いていた母が
お前が悪いとわたしを叱る
祖父の箸が伸びてくる
自分のおかずと間違えて
わたしの焼き魚を食べる
今はもう二十光年も遠いところから
腕を伸ばして奪いにくる
この今も
そしてこれからも
生死を超えて生きている
生きている立場さえ違っても
わたしたちは今も家族のままだ
適切な量のお代りをを望んだり
適切な嗜好を望んだり
悲しくて泣いたり
嬉しくて喜んだりする距離が
今になってやっと理解できたり
離れ離れになっても
なお近づくことのできない
遠いところから
わたしは彼らとの距離
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