Black and Blue/ホロウ・シカエルボク
 
中で口を閉ざしたままでいるとそういうものたちと会話が出来るようになる。世間というやつはいちいち言葉を吐きたがる。そうすることでしかなにかを証明出来ないというみたいに。あるいは本当にそうかもしれない。世間というものが存在を証明しているというふうにこの目には映ったことがない。あるいはその原因は傲慢さなのかもしれない。あちら側の原因も。こちら側の原因も。だったらなんだ。生きてきたという事実に蓋をすることは出来ない。誰もが自分の足取りを肯定したがる。難儀なのは、その足跡を幾分大目に語ろうとしてしまうことさ。便所に行く。水を飲む。すべてが溶けたばかりのクラッシュアイスみたいに満遍なく冷えている。爪先から冬が
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