If winter comes, …/木屋 亞万
 

新しい気配で満たされているはずなのに
街は死にかけのような静けさ
あるいはもう死んでしまって
葬式のようにそわそわと静かだ

灰が街に降っているのだとしたら
この身を切るような冷たさも
乾いてひりひりとする頬も
灰に対する不平や怒りに変えられるけれど
雪があまりに美しく華やかに降るので
負の感情を起こす勇気は眠ってしまう

これが今年の最後の雪だとしても
街を歩いているときに
雪が傘の中へ吹き込んでくるたびに
瞬きするたびに、足が雪を踏みたびに
思い出す人がいて
その人が気まぐれな雪のように
ふっと現われて
冷たい向かい風に乗って
そっと僕の胸にもたれてき
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