If winter comes, …/木屋 亞万
てきたなら
一体どうしようか、などと馬鹿なことを考えて
靴の頭に雪を乗せながらとぼとぼと歩いていく
鼻と耳が冷えていたはずなのに
耳だけはなぜか赤くなってきて
白い雪を葉にのせて別の生き物になった夾竹桃を
立ち止まって眺めていた
僕は今でもあの人のことが好きなのかもしれない
小賢しい臆病者よりも勇気のある馬鹿の方がよかった
将来とか未来とか今後とか、先のことばかり気にして
結局今から逃げてしまっていたのだと今更気づいても
あの時の今はもう遠い過去のことになってしまった
雪の日に出かけようと思うなら、
めったに降らない雪が積もる街を眺めたいのなら
雪が溶けてしまう前に部屋から出て外を歩かなければならない
たとえどれだけ寒くても、すこぶる体調が悪くても
先のことを考えて無難な方ばかり選んでいたら
見えない気色がいくつもある
そんな当たり前のことに今になって気づいたのだ
辺りが温かくなるのを待っている男は雪を知らぬまま死んでいくのだ
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