長編詩 成人の日に寄せて(抄)/salco
 
を掴まれ絵本の前に連行されて以来は
大人の指す事象を鸚鵡のように繰り返さなければ歓迎されず
親の落胆や苛立ちを恐れて顔を窺い
低能呼ばわりされる不遇の惨めをやがて理解し
魔法の世界は随分と色褪せてしまったのだった


白地図のようだった大脳新皮質は
若干の遺伝的出来不出来はあったものの、
スポンジのように知識を吸収するので
小学校では概念と法則の基礎を叩き込まれ、
2年生になる頃には4tトラックに満載の1個300gのリンゴを紙上で数え、
1個あたり98円のそれらを買うには消費者ローンでいくら借りたら良いのかまで
何とか解るようになったものだから、
一層欲をかいた親達は子
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